「昔々あるところに、ラマショという巨人とメイカラという妖精がいました。
彼らは、強力な魔法を持つ仙人に仕えていました。
二人とも、同じくらい頭が良く、仙人 は、二人を同じくらい好きでした。
ある時仙人は、二人の知識を試すため、テストをしました。
仙人は、「もしどちらかが、グラスにいっぱいの露を取り、私に渡したら、私はその露をカエ・モノレア(カエは、クメール語でグラスの意味。モノレアは、魔法のグラ スの名前。)に、移そう。カエ・モノレアは持ち主の願いを叶える事ができるものだ。」といいました。
早速、ラマショは、グラスを持ち、木の葉や草の露を取りました。
朝早くから、何日間も試みましたが、良い結果が得られません。
メイカラは、利口な女性だっ たので、スポンジ状の柔らかい木の中心部を取り、木の葉や草の露を吸わせ、その柔らかい中心部をしぼって、グラスに露を入れました。妖精は、グラスが露で いっぱいになるまで、そうして集め、仙人に差し出しました。
仙人は、ラマショよりメイカラの方が、利口だと思い、露の入ったグラスをカエ・モノレアに変えました。
仙人は、そのグラスをメイカラに渡し、「この カエ・モノレアは、とても強力なものだ。もしおまえに、願い事があったら、このグラスを持ち上げて振ればいい。すぐにでも、その願いは叶えられるだろう。また、お まえは空を飛び、何処へでも行きたいところに行ける。」といいました。
カエ・モノレアを受け取った後、メイカラは、魔法のグラスを持つと、上に掲げて振り、海に向 かって真直ぐに空を飛びました。
一方 ラマショは、グラスにいっぱいの露を取るのに、長い時間が掛かってしまいました。
彼は、露の入ったグラスを仙人に差し出しましたが、仙人は、「もう遅 い。たった今私は、魔法のグラスをメイカラにやってしまった。私の魔法では、そのグラスを一つしか作れない。」と言いました。
ラマショはそれを聞き、大きな声を上げて泣き出しました。
可哀想に思った仙人は、ラマショに魔法の斧を渡す事にしました。
仙人は、「お前は、メイカラから魔法のグラスを取り返せるぞ。なぜなら彼女は、雨の中を飛ぶ のが好きだからだ。雨の日、お前はこの斧を空に向かって投げるのだ。その時メイカラは、魔法のグラスを投げてしまうだろう。そこでお前が奪うがいい。しかし、お前が魔法のグラ スを振っているメイカラを見たら、斧を投げる前に、すぐ目を閉じなさい。」と言いました。
ラマショは、喜んで斧を受け取り、カエ・モノレアを奪いに空を飛びました。
妖精が、巨人を見たとき、「彼は、とても悪いことを考えている。」と気付きまし た。だから彼女は、魔法のグラスを振り、空に向かって飛んで行きました。ラマショは、眩しく光る魔法のグラスをすぐに見つけ、目をつぶり、斧を投げまし た。斧は、とても速く大きな音を立てて飛びましたが、彼女に当たりませんでした。
この日以来、私達は雨の日に、魔法のグラスの眩しい光を見て、斧の煩い音を聞くようになりました。
こうして、カンボジアでは、斧、くわ、ナ イフのような雷を「光っている石の斧」と呼び、これらの物は、空から地上に向かって巨人が投げた斧であると信じられています。」
この話は現在レストランなどで伝統舞踊の一つとして見る事が出来ます。
巨人が斧を投げるときは、太鼓がドドドンと鳴り響き、雷鳴を表します。
メリハリの利いた楽しい踊りです。