街を渡る風の中に乾季の匂いがし始めた。
空に浮かぶ雲も雨季のそれとは違い、薄っぺらく、水を溜め込んでいるようには見えない。
しかし今朝、雨音がするので、窓を開けてみると、しとしとと小雨が降っていた。
住民のほとんどが農業を営む国。
ここの人達にとって、雨は恵みの雨であり、雨の降る季節は農繁期である。
毎年10月末頃には、農繁期の終わりを祝う、ボンタイ・プロティットと呼ばれる行事がある。
夜8:00
トンレサップ湖へと行くと、多くの屋台と大勢の人で溢れかえっていた。
勿論街灯など無い為、辺りは暗く、屋台周辺以外では、人の顔も良く見えない。
そんな中、湖の上からお経が聞こえて来たので覗いて見る。
煌びやかな船の前で、僧侶達がお経を唱えていた。
これからこの船に乗り、沖へ出るのだと言う。
雨季の終わりは、チェイン・プレア・ヴォッサーといい、雨季の期間、寺院に篭って修行していた僧達の修行の終わりも意味している。
しばらく屋台で時間をつぶした後、船に乗って沖へと出た。
時刻は既に10:00を回っている。
またしばらく沖で漂っていると、今度は船上で、僧侶の乗った船と出くわした。
船はゆっくりと互いに近づいて行き、遂には横に並んだ。
横に着くや、皆一斉に僧侶の乗る船へと移る。
すると僧達がそれぞれにお経を唱えてくれた。
祭りの喧騒を遠くに聞きながら、ほろ酔いで船の上に横になると、月が見えた。
暗闇の中、船上で酒を飲み、星を、そして月を愛でる。
かねてよりこの地の人々は、農繁期で疲れた体をこうして癒してきたのだろう。
PR