以前書いた
「ニャック・ター」
一見すると立派な祠。
でも実はこの祠、少ーし傾いている。
土台を見てみると、意図的に斜めになるように盛り土をされている。
これの理由として、次のような民話が伝わっている。
「昔々、ある村に一人の娘が嫁いで来ました。この村はとても信心深く、ニャック・ターの祠の前を通る時は必ず一礼をして通っていました。
ある日、娘は祠の前を礼をせず、素通りしようとしたその時、祠からニャック・ターが現れ、娘に襲い掛かると、祠の中へと引きずり込んでしまいました。
それを聞いた娘の両親は、村へと飛んで来て、祠の前で娘を返して欲しいと懇願しました。
しかし、ニャック・ターは返事をしません。それから1年、2年と両親は懇願し続けましたが、娘が帰ってくる事はありませんでした。
更に年月は流れ、両親は年老い、ニャック・ターのいる世界へと旅立つ時が迫っておりました。
そこで両親は考えました。
「もう娘が帰ってくる事はあるまい。ならばせめてニャック・ターへ一矢報いたい。」
両親はその思いを、村の占い師に相談しました。
すると占い師はこう答えました。
「娘の父が死んだ時、その棺桶の中に炭を4つ入れて置きなさい。そうすれば死後の世界へと炭を持って行ける。そしてその炭を持って、ニャック・ターの家へ火をつけるのです。」
両親はそれを聞くと、その時が来るまで静かに過ごしました。
それから数日後、その時は突然にやって来ました。
娘の父は亡くなり、棺桶へと入れられました。娘の母は急いで炭を探しに行きました。しかし、どうしても3つしかありません。
それもそのはず、実は占い師との話をニャック・ターは聞いていて、先に村中の炭を奪ってしまっていたのです。娘の母は諦め、棺桶の中に炭を3つだけ入れ、娘の父を送り出しました。
死後の世界へと着いた娘の父は、3つしかない炭を不審に思いながらも、それを持ってニャック・ターの祠へと行きました。
ニャック・ターの家へ行き、中にいる事を確認すると、娘の父は、3つの炭に火をつけ、柱の傍へと置き、ニャック・ターの家を燃やそうとしました。しかし、柱は4本あった為、ニャック・ターは無事外へと飛び出すと、たちまち火を消してしまいました。娘の父は思いを遂げる事が出来ませんでした。
それ以来、ニヤック・ターの祠は傾いて造られるようになりました。」
教訓:ニャック・ターの前を通る時は、手を合わせて、一礼しましょう。
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