-前回までのあらすじ-
やっと遺跡の近くまで来たと言うのに、思わぬ形で道を塞がれた一行は、今度は別のルートから遺跡を目指す。次々と襲い掛かる危機を退け、彼らは無事、遺跡へと辿り着けるのか!?
次なる危機は意外なほど早く訪れた。
先頭を行くSさんの歩みが止まり、我々だけに聞こえるような声で言った。
Sさん「すっごい、見られてる。」
右前方を見ると、2頭のクロバイ(水牛)が確認できた。
その時、私は瞬間的に察知した。
彼らは、興味があって見ているのではなく、「威嚇」をしているのだと。
あごを僅かに上げ、睨んで来る姿は、中学生の頃、薄暗いゲームセンターで見た、「ヤンキー」のそれと正しく同じ。人も動物も野性的な威嚇の仕方は同じだったのだ、とこの時思った。
しかし何故、彼らはこうも威嚇をして来るのか。
その答えは数秒後に判明する。
私達の正面前方から、ガサガサッという音と共に子牛が一頭、彼らの方へと近づいていった。
すると、手前にいた水牛はくるりと踵を返し、私達から離れて行った。
Kくん「子牛がいたんだぁ。」
これで安堵した我々は前に進もうとしたが、Sさんが進まない。
Sさん「まだ見てるよ~。」
そう、手前の一頭は去ったが、もう1頭がいた。
しかも彼は首に、大きな鈴をぶら下げている。
それは、グループの大将である事の証だった。
彼の眼には、私達は未だ警戒すべき相手だと映っていたのだろう。
威嚇を解く気配は無い。
私たちが怯んでいるとSさんはすかさず、彼にこう告げた。
Sさん「すいません。通ります。」
なんと!謝った。
勿論私たちも後に続いた。
私・Kくん「すいません、失礼します。」
彼とは眼を合わせないように、干上がった水田の端をそろそろと進んだ。
こうして何とか危機を脱した我々だったが、すでに体力をかなり消耗していた。
残りの水も心もとない。
さらに、先に進もうにも獣道の様なところしか見つからなかった。
途方にくれた我々は・・・
あり地獄で遊んでいた。
あり地獄を、巣から引きずり出したりしてリフレッシュした我々は、ここで一つの結論をだした。
「引き返そうか?」
「正規のルートに戻ろう。」
当然の選択である。
疲れ果てた末に、やっと人並みの思考が戻ってきた我々は、正規のルートを目指した。
Kくん「さっきのところ、また通るんですよね?」
私「あっ・・・うん。そうだね。」
Sさん「・・・・・。」
我々は、正規のルートを目指した。
つづく。
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