流れていく雲を見上げながら、鬱蒼と茂る森林の中を歩いて行く。
カンボジア特有の熱気は、日陰に入れば急激に和らぐのだけれど、一度流れ出した汗を押えるのは簡単ではなかった。それでも、時折聞こえる虫や鳥達の声は夏の風鈴のように響いて来て、清涼感を感じさせてくれた。
7世紀、真臘の中央都市として建造されたこの「サンボー・プレイクック」という名は、19世紀に発見された時に、この土地の名と森と言う意味の現地語を併せたと言うのはすぐに納得できた。当時は「イーシャナプラ」と呼ばれていたらしい。
アンコール王朝以前に建立された事もあり、ヒンドゥー教寺院としての性格を色濃く残しているのが特徴的だ。
中でもこのフライングパレス(空中宮殿)と呼ばれている装飾はとても興味深く、宗教的概念だけでなく、当時の人々の理想をも表しているかの様だ。
他にも、明らかにカンボジア人ではない表情をした装飾や、民話をモチーフにしたもの、ハリハラ神やドゥルガー等、アンコール遺跡では見る事ができないものも多い。
なによりもこの遺跡の良いところは、修復の手が入っている箇所も多いが、この地域に広く点在している為に、手付かずの箇所も多いところだ。
森林の中を彷徨い歩き、遺跡に出会う瞬間は、まるで自分が初めてその遺跡を発見したかのような錯覚に陥る。その言い知れぬ高揚感はこの地を出るまで続く。
現在、現地には英語のみのカンボジア人ガイドが3名ほどいて、カンボジア語のみであれば約30名のガイドがいると言う。
以前に比べれば随分と道もよくなり、シェムリアップから片道約3時間で行く事ができるようにもなった。
時間に余裕があればこちらへ足を伸ばして見るも面白いだろう。
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