こちらに来たばかりの頃、「一番好きな遺跡は何処ですか?」と在住者に聞いて周った。
最も多かった答えが、ここベンメリアだった。
そこで早速行って見たものの、今一つここの魅力が解からない。
結局、魅力が解かるまで、足繁く通いつめる事にした。
シェムリアップから車で約1時間半。
距離にして片道40Kmはある。
それでも多いときは週に2回は行っていた。
ベンメリアはアンコール遺跡入場券とは別に入場料を払わねばならず、遺跡の途中に綺麗なトイレと料金所がある。そこにはバナナが吊るしてあって、自由に食べていい事になっていた。
ここに来てはバナナを食べ、「あ~今日もいまいち魅力が掴めなかったな」などとぼやいていた。
今回久しぶりにここを訪れ、料金所のあたりで当時の事を思い出した。
久しぶりだった為、当時と変わっているところはないかと、あたりを見渡していると、子供が遺跡の中を走り回っていた。
頂上付近からまるで猿のように飛び跳ねながら降りて来て、最後は滑り台の要領で見事着地。
そのまま走り去っていった。
ここの子供達は観光客が来たとき、階段の上り下りに手を貸したり、ガイドの真似事をしながら、小遣いを稼でいる。溌剌としていて、屈託なく笑う姿はとても可愛らしい。
子供達の服は大抵どこかが破れていて、一人の子は股間が大きく破れ、パンツが丸見えになっていた。
写真に撮ろうとすると、恥ずかしがって隠れる。さっきまで、大股開いて走り回っていたくせに。
周りにいた他のお客様も一緒になって大きな声で笑った。
一通り見て周り、南門から出ようとしていたら、一人の女の子が崩れた欄干の上に寝そべって、歌を歌っていた。
近寄ると上体を起して振り向き、照れたように少しだけはにかんだ。
東のアンコール・ワットと呼ばれるベンメリア。
その魅力は、崩れ加減や、ガジュマルの樹、アンコール・ワットのモデルとなったと言われる造り、綺麗に残っているナーガだと言われる。
今思えば、私は料金所でただで貰ったバナナを食べながら、料金所の人や、ここの子供達に冗談を良いながら遺跡を周る、その事を楽しみにしていたように思う。
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